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  中性脂肪蓄積心筋血管症(Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy,TGCV)は2008年、我が国の心臓移植待機症例より見出された新規疾患単位であり、心筋細胞、冠状動脈硬化巣に中性脂肪が蓄積する結果、重症心不全、不整脈を来す難病である (Hirano K, et al. N Engl J Med. 2008)。これまでのところ明らかなTGCVの原因遺伝子は、細胞内中性脂肪分解の必須酵素であるAdipose triglyceride lipase (ATGL)である。2009年より、厚生労働省難治性疾患克服研究事業として、TGCV研究班が立ち上がり、本症の1日も早い克服を目指して、その疾患概念の確立、診断法、治療法の開発が進められている。正常心では、エネルギー源となる長鎖脂肪酸を、本症では細胞内で代謝できず、中性脂肪として心血管に蓄積してしまう、いわば、心臓の肥満であるといえる (Hirano K. J Atheroscler Thromb. 2009)。組織におけるTG含量と血漿TG値が必ずしも相関しない特徴があります。
  TGCV研究班の活動の結果、原発性TGCVであるATGL欠損症は、疑診例を含め我が国で9例、海外で16例が見出された。ATGL欠損症は、2007年に、Fischerらによりmild myopathyとして、報告されたこともあり、神経内科学領域からの報告が多い。心筋症の合併が報告されているのは、25例中、16例。男女に分けると、男性で10例中、10例。女性で、13例中5例(2例は性別不明)であり、男性では、心病変が必発のようである。心筋症の形態としては、男性は、拡張型心筋症、女性は、肥大型心筋症を呈する傾向にあり、鑑別診断として重要である。末梢血の多核白血球の空胞化 (Jordans’ 奇形と呼ぶ)は、心症状、骨格筋症状の発現以前から全例に認められ、診断的価値が高いと考えられる。我が国の症例では、9例全例に心病変が確認されており、その診断時の平均年齢は、34歳である。5例はすでに心臓死、2例は、心臓移植を受けており、特に、我が国の症例では、心症状が重く、突然死する症例が多いと考えられる。研究班では、診断基準(案)を作成し、国内外からの情報をさらに収集する予定である。また、大阪大学医学部附属病院において、患者さんに今すぐに適応できる治療法として、特異的栄養療法を開発し、倫理委員会の承認を得て自主研究を行っています。

[ TGCV : 基本病態 ]

細胞内の代謝異常により、中性脂肪が蓄積する結果、罹患臓器・細胞に機能不全状態を生じる

心筋および冠状動脈に中性脂肪が蓄積する結果、重症心不全・虚血性心疾患を呈する難病である。

心臓以外の症状として、骨格筋ミオパチーをきたす症例もある。

組織のTG蓄積量と血漿TG値は必ずしも相関しない

心臓が脂肪細胞のようになり、脂肪酸を中性脂肪として蓄えてします。いわば、
”心臓の肥満”である